【完全ガイド】Wan 2.7 使い方|Thinking Mode搭載・27B×4K・8秒のAI動画をMVクリエイター視点で解説
現役MVクリエイターの青来です。Wan 2.7 は Alibaba Tongyi Lab が2026年3月末〜4月にかけて公開した最新のAI動画生成モデルです。
「Wan 2.6 と何が違うの?」「27B パラメータで映像は本当に変わる?」「MV制作に投入して現実的か?」——ここではその疑問を、Wan 2.5(#73)と Wan 2.6(#99)を触ってきた立場から、実戦目線で整理します。
この記事は次のような人向けです:
- Wan 2.5 / 2.6 を触ってみて Wan 系の方向性が合うと感じている人
- Alibaba 系AI動画(Wan・Qwen・HappyHorse)に本気で乗るか迷っている人
- MV / PV / SNS動画で 「本人出演+4K+8秒」までを一気に生成 したい人
- Seedance・Runway・Kling の中で棲み分け方針を決めたい人
Wan 2.7 とは|Alibaba Tongyi Lab の27Bパラメータ最新世代
Wan 2.7 は Alibaba Tongyi Lab(通義実験室)が公開した、Wan シリーズの現時点で最上位モデルです。27 billion(270億)パラメータの拡散トランスフォーマー基盤で、次の4モードをひとつのモデル内で扱えます。
- T2V(Text-to-Video):テキストから動画
- I2V(Image-to-Video):静止画から動画
- R2V(Reference-to-Video):参照動画から動作・声・雰囲気を継承
- Video Editing:指示ベースで既存動画を書き換え
映像の出力は最大4K、長さは最大8秒(Wan 2.6 は7秒でした)。ネイティブ音声同期にも対応し、リップシンクを別モデルに投げる必要がありません。「本人が歌って踊る短尺」がワンパスで出せるのは、MV/PV クリエイターにとって大きい変化です。
27B は Runway Gen-4.5 と同格帯。ここに Thinking Mode が乗ったのが 2.7 の本気度です。
Wan 2.6 から 2.7 で変わった5つのポイント
Wan 2.6 のレビューは #99 に書きましたが、2.7 は「速さより表現の詰め」に振り切ったアップグレードです。差分だけ列挙します。
- パラメータ数:Wan 2.6(20B級)→ 2.7(27B)で細部描写の解像度が上がる
- 最大尺:7秒 → 8秒(伸びは小さいが、MV1カットとして使える長さ)
- 出力解像度:1080p 標準 → 4K 対応(写実的な肌・布地・髪の毛の粒度が別物)
- Thinking Mode:プロンプトを「解釈→計画→生成」の3ステップに分けるモード追加
- 編集モード:既存動画に対して指示ベースで書き換え(従来はR2V+I2Vの合わせ技だった処理を単一モードで完結)

2.7 で”変わらなかった”ところ:
- フレームレートは 30fps 中心(Wan 2.6 で 24→30 に更新済み)
- 音声同期は多言語対応(日本語のリップシンク精度は Kling 3.0 Omni の方がやや強い)
- 提供チャネルは中継プラットフォーム経由(WaveSpeedAI・fal.ai・kie.ai 等)
Thinking Mode|プロンプト解釈にワンクッション挟む新機能
Wan 2.7 の目玉です。従来モデルは「プロンプト→即生成」でしたが、Thinking Mode をONにすると、モデルが内部で計画を立ててから生成します。
具体的には、こんな3ステップで動きます。
- 解釈:プロンプトを分解し「主題・カメラ・光源・時間・音」の要素を仮抽出
- 計画:8秒の中でどこにアクセントを置くか(例:中盤で被写体が振り向く)をタイムライン化
- 生成:計画に沿って拡散プロセスを回す

結果として「プロンプト詰め切れないのに、なぜかそれっぽく出る」現象が減ります。逆に、意図した動きを厳密に再現したい場合は、Thinking Mode を切って I2V や R2V に切り替えた方が安定します。
「解釈が入る=ある程度モデル任せ」なので、演出を完全にコントロールしたい派は I2V で構図を固定した方がラクです。
料金と提供経路|クレジット非失効が現実的な救い
執筆時点(2026年7月)の情報では、Wan 2.7 は Alibaba 直営のクラウド API と、複数の中継プラットフォームで提供されています。
- Starter:100クレジット ≒ 10ドル前後(非失効)
- Plus/Pro:300〜600クレジット ≒ 30〜50ドル前後
- 8秒1本 = 概ね 5〜10クレジット(解像度・モードで変動)
クレジット非失効は Wan 系の伝統で、Runway・Kling が月次で失効する中では相対的に優しい設計です。Apache 2.0 での重み公開についてはシリーズの過去実績(Wan 2.2 で公開)から高確率で来ると予想されますが、Wan 2.7 は執筆時点で公開重み未リリースなので、断定は避けます。
中継プラットフォーム側の料金差
同じ Wan 2.7 でも中継業者によって単価が違います。実測で 0.05〜0.15 ドル/秒 のレンジ。fal.ai や kie.ai は API 課金型、Adskull や InVideo は月額込み。執筆時点・提供経路で変動なので、契約前に必ず最新価格を確認してください。

MV制作へどう投入するか|青来の実戦ワークフロー
現役 MV クリエイターとして、Wan 2.7 を月2〜3案件で試している範囲での使い方をまとめます。
パターン1:R2V で「本人出演」ワンカット
撮影データが少ないアーティストの MV で、参照動画(過去のライブ映像等)から本人の動きと雰囲気を継承させて8秒を生成。実写では現場入り不要になる貴重な選択肢ですが、肖像権と声のクローンについては契約書に一文入れないと後で揉めます。
パターン2:I2V で絵コンテを動画化
Firefly や Midjourney で作った絵コンテ画像を Wan 2.7 で動画化。Thinking Mode を OFF にして、動きを I2V の入力画像でコントロール。DaVinci に持って行って色を仕上げるまで一本の流れになります。
パターン3:編集モードで既存カットの修正
既存 AE コンポの背景だけ差し替えたい・カメラ寄りをやり直したい、といった局所修正に Wan 2.7 の編集モードが刺さります。ただし時間軸に沿った一貫性は完璧ではないので、置き換え後に AE のロト補助を入れる前提で組みます。
実戦で使えた組み合わせ:
- Wan 2.7(本人出演カット)→ DaVinci Resolve 21(CineFocusで被写界深度)→ 納品
- Firefly Boards(絵コンテ)→ Wan 2.7 I2V → Premiere Pro でカット割り
- Wan 2.7 編集モード → After Effects の Object Matte で細部詰め
他モデルとの棲み分け|Wan 2.7 が刺さる場面
同じ AI 動画でも、モデルによって得意分野が明確に違います。Wan 2.7 が現時点で優位な軸を整理します。
- Wan 2.7 vs Seedance 2.5:30秒ワンショットで殴りたいなら Seedance 2.5。8秒×4Kで密度を稼ぐなら Wan 2.7。
- Wan 2.7 vs Runway Gen-4.5:物理演算・ライブアクション寄りの動きは Gen-4.5。参照動画からの継承精度は Wan 2.7 が優位。
- Wan 2.7 vs Kling 3.0 Omni:キャラの動作+声の Digital Twin は Kling 3.0 系が強い。テキストからの一発生成なら Wan 2.7 の Thinking Mode。
- Wan 2.7 vs HappyHorse 1.1:ベンチマーク上位の写実は HappyHorse。編集モードまで込みで欲しいなら Wan 2.7。
「1つに絞る」より「シーン別に使い分ける」のが2026年後半の現実解です。

Wan 2.7 が合う人・合わない人
✅ Wan 2.7 が合う人:
- Wan 2.5 / 2.6 で既にワークフローが回っている人(設定資産が活きる)
- MV / PV / SNS で 8秒×4K の高密度カットを量産したい人
- クレジット非失効の月額運用が好きな人(月額縛りが嫌い)
- Firefly や Midjourney で絵コンテを作って I2V に流すワークフローの人
❌ Wan 2.7 が合わない人:
- 30秒〜1分の長尺ワンショットが主戦場(→ Seedance 2.5 / Kling 3.0 Omni)
- 日本語リップシンク精度を最優先(→ Kling 3.0 Omni の方が現時点では優位)
- Adobe エコシステム内で完結させたい(→ Firefly Video や Runway 連携)
- とにかく無料で試したい(→ 中継プラットフォームの無料枠は総じて薄い)
よくある質問
Q1:Wan 2.6 で組んだプロンプトはそのまま動きますか?
A:ほぼそのまま動きます。ただし Thinking Mode を ON にすると解釈が入るので、動きの制御が弱まる感触があります。厳密な演出を通したい場合は Thinking Mode OFF+I2V に切り替えるのが安定します。
Q2:日本国内から公式アカウントで契約できますか?
A:執筆時点では、Alibaba Cloud 経由か中継プラットフォーム(fal.ai / kie.ai / WaveSpeedAI 等)経由の2択が現実的です。日本語 UI の代理店経由が増えると使いやすくなるはずですが、まだ数は少ないです。
Q3:商用利用は可能ですか?
A:Alibaba の利用規約準拠で商用可の設計ですが、参照動画(R2V)や画像(I2V)に第三者の肖像・声・作品が含まれる場合、そちらの権利処理が別途必要です。詳しくは AI動画商用ガイド にまとめています。
Q4:ローカルで動かせますか?
A:Wan シリーズは Apache 2.0 で重み公開の実績があります(2.2 で公開)。ただし Wan 2.7 は執筆時点で重み未公開。RTX 4090 級で公開後に動くと期待されますが、公式アナウンス待ちです。
まとめ|「Wan 2.7 は Thinking Mode で選ぶモデル」
Wan 2.7 の位置づけを一言でまとめると、「27B × 4K × 8秒 × Thinking Mode」で”詰めきれないプロンプトの受け皿”を作った本気のアップデートです。
Wan 2.6(#99)からの乗り換えは、4Kで密度を稼ぐシーンがある人にはハマります。逆に速度・尺・安さを優先するなら Wan 2.6 に残るか、Seedance/Kling を選ぶ方が現実的。1つに絞らずシーン別に使い分けるのが、2026年後半の映像制作の勝ち筋です。
Alibaba 系AI動画に本気で乗るか迷っている方は、まず #99 Wan 2.6 のワークフローを固めてから 2.7 の Thinking Mode を試すのが、遠回りに見えて一番早いルートです。
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